ドラちゃんのおへや

アニメ制作なんてわけないよ

第5回「サブタイトル考察(1)」

 サブタイトルとは、各話に付けられたタイトルの事です。当サイトでは、原作・アニメ各話のサブタイトルを、それぞれデータベースとして公開しています。
 「ドラえもん」は原作漫画付きのアニメですが、テレビアニメについてをご覧いただくと、サブタイトルが必ずしも原作と同じではない事が、おわかりいただけるでしょう。もちろん、原作の単行本でお馴染みの題そのままのものもありますが、その一方で、原作とは全く異なる題もあります。
 アニメ版サブタイトルの付け方が不統一である理由は、おおよその見当が付けられます。その理由について、それを、大山ドラをおおざっぱに三つの時代に分けて、考察してみます。

1.帯番組初期 原作に忠実な時代

 アニメ「ドラえもん」の放映は、1979年4月より始まりました。第1話は「ゆめの町 ノビタランド」で、以下「テストにアンキパン」「のび太のおよめさん」「地下鉄をつくっちゃえ」など、最初のうちは基本的に、てんとう虫コミックス版の原作と同じサブタイトルが付けられています。
 放映開始当初は、てんとう虫コミックス収録済みエピソードからのアニメ化がほとんどであり、内容的にも原作にほぼ忠実であったため、当然のようにサブタイトルも原作通りになったのでしょう。

 放映1年目となる1979年放映作品のうち、てんとう虫コミックスに収録された原作を使っているにも関わらず、原作とサブタイトルが違うエピソードを確認すると、

・第33話「紙工作は楽しいな」(原作:17巻「紙工作が大あばれ」)1979/5/9放送
・第38話「リザーブマシン」(原作:17巻「ドラやき・映画・予約ずみ」)1979/5/15放送
・第57話「ハウスロボット」(原作:17巻「家がロボットになった」)1979/6/6放送
・第61話「なくし物とりよせ機」(原作:18巻「あの日あの時あのダルマ」)1979/6/11放送
・第182話「新種植物せいぞう機」(原作:21巻「だいこんダンスパーティー」)1979/10/30放送
・第220話「おかし牧草」(原作:24巻「おかし牧場」)1979/12/13放送

以上の、6本です。  実は、第17巻の発行日が1979年7月25日であり、上記のうち17巻収録分のエピソードが放映された時点では、まだ16巻までしか出ていませんでした。要するに、これらの話は当時は単行本未収録だったわけです。
 つまり、放映初期であっても100%てんコミ収録作品からアニメ化していたわけではなく、雑誌に発表されてからあまり時間が経っておらず、単行本にも入っていない新しめの作品も、少しは選ばれていたのです。まだ単行本化されていない以上、原作とアニメでサブタイトルが異なっていても、やむを得ないと言えるでしょう。

 この5本以外にも、てんコミ未収録作品からは、

・第23話「猛獣ならし手袋」(原作:FF23巻)1979/4/27放送
・第25話「のりものアクセサリー」(原作:TCS4巻)1979/4/30放送
・第51話「ごくうリング」(原作:TCS6巻)1979/5/30放送
・第53話「実物射的」(原作:FF4巻「実物射的で狙い撃ち」)1979/6/1放送
・第59話「空気ブロックせいぞう機」(原作:PC10巻)1979/6/8放送
・第114話「答えは一発!みこみ予ほう機」(原作:FF24巻「答え一発!みこみ予ほう機」)1979/8/11放送
・第142話「もしもジャイアンがスーパーマンになったら」(原作:+2巻「スーパージャイアン」)1979/9/13放送
・第221話「ゴマロック」(原作:FF21巻)1979/12/14放送

 以上の8本が、アニメ化されています。

 これらの状況から推察すると、初期のアニメドラ制作方針としては、主に単行本収録作品から話を選んでいたものの、それだけに留まらず、単行本未収録でスタッフが面白いと判断した作品も少数ながらアニメ化していたようです。
 「猛獣ならし…」以下のてんコミ未収録作品の多くは、最近になって「ぴっかぴかコミックス」「ドラえもん カラー作品集」等に収録されて、容易に読めるようになりました。それまでは、途中「藤子不二雄ランド」「カラーコミックス」等への収録はありましたが、比較的速く絶版になってしまったため近年までは原作ではマイナーな話だったと言えるでしょう。
 「空気ブロックせいぞう機」などは、ぴかコミ以前は全くどの単行本にも入っていなかったにもかかわらず、アニメ版はビデオ・DVD化されているので、アニメで話を知った人も多かったのではないかと思います。

 ともかく、放映初期に関しては、ほとんどのエピソードのサブタイトルが「原作=アニメ」であり、原作を知っている人間にとっては、どの話がアニメ化されたのか非常にわかりやすい状況だったと言えます。

2.帯番組中〜後期 転換期

 サブタイトルの付け方に関して変化が現れたのは、放映2年目に入った1980年4月あたりかと思います。この頃から、原作とは異なる題が、かなり多くなってきました。

 ここで、当時の原作ストック量を確認してみます。最初の1年間で、実に309話(特番除く)ものエピソードが放映されました。一方、1980年3月末の時点で、てんとう虫コミックスは18巻までしか刊行されておらず、合計収録話数は340話。つまり、最初の一年間で、単行本収録作品のほとんどを使っています。
 その結果、新旧問わず未収録作品からアニメ化される割合が高くなり、そしてそれでも原作が足りないため、藤子・F先生の別作品「ポコニャン」をアレンジ(ポコニャン→ドラえもん、太郎→のび太に置き換え)したり、ついには「蒸気機関車に乗ったよ」や「チャンバラのび太ランド」など、アニメオリジナル作品を作らざるを得ない状況となっていました。 9年間かけて描かれた膨大な数の原作エピソードを、たった一年で使い切ってしまうのですから、帯番組の原作消費の速さは尋常ではありません。

 サブタイトルに話を戻しますと、単行本未収録作品は、初出時に無題であったり、編集者が付けたと思われるスマートでない題が付いている事も、多々あります。これらの話をアニメ化するにあたって、無題の場合は主に道具名がそのままサブタイトルとなり、また編集者による命名と思われる題であっても、そのままアニメのサブタイトルに採用される場合もありました。
 中には、無茶な例として「ドラとのび太のクリスマス!」(前後編、1980年12月23・24日放映)のように、扉ページの煽り文句何が起きるか?ドラとのび太のクリスマス!」をサブタイトルに使ってしまった事もあります。このサブタイトルではわかりにくいのですが、これは「サンタメール」のエピソードです。

 このような状態でしたので、放映2年目のサブタイトルを眺めると、ほぼ原作通りの馴染み深い題が付いていた1年目とは違って非常に雑然としており、統一感がありません。
 この後も、帯番組での放送が終了する1981年9月まで、この傾向は続きます。

3.金曜日に移動、そして

 アニメ「ドラえもん」は、1981年10月より金曜19時のゴールデンタイムに進出して、週1回・2本立ての放映となりました(1982年1月より再放送2本+新作1本の3本立てに変更)。

 しかし、単行本化された原作を、ほとんど使い切ってしまっている状況は変わらず、古めの未収録作品も、多くは帯番組時代にアニメ化していました。加えて、原作者の藤子・F先生の「オリジナルエピソードは作って欲しくない」という意向があったため、放映枠が金曜夜に移ってからは、雑誌掲載からまだ間がない新しめの原作を、どんどんアニメ化していく事となりました。

 そして、1980年代に入ってからは学年誌自体のノリの変化があったのか、サブタイトルに過剰な煽り文句が付く事が多くなっていました。これをそのまま使うと非常に長ったらしい題になってしまうせいか、初出時の題をそのまま使うケースは少なくなり、サブタイトルの大半は、その回にメインで使われる道具名となりました。この傾向は、1983年以降で特に顕著に現れています。
 道具名そのままのサブタイトルは、個人的には、あっさりしすぎて味気ないと思います。原作では、単行本収録時に、ひねりの利いた題が付けられているだけに、これがアニメに反映されなかった事は残念です。ただ、道具名そのままのサブタイトルは、どの原作のアニメ化であるかは、かえって判断しやすかったかもしれません。

 こんな状況ですから、原作とのサブタイトルの一致は、アニメ・原作ともに道具名そのままの題と言う場合を除いて、ほとんど無くなってしまいました。
 ただ、例外として「さらばキー坊」「ドンジャラ村のホイ」など、アニメと原作が同時進行だったエピソードがありますし、「ジャイアンへのホットなレター」「超リアル・ジオラマ作戦」「雨男はつらいよ」など、特定の道具がメインで活躍しない話には、原作と同じ題も見られます。

 また、「テストはやっぱりこわい」(1983年3月4日放映、原作:28巻「大ピンチ!スネ夫の答案」)のように、原作の初出と同じ題にしたために現在ではどの原作かわかりにくいケースや、「のび太はいかが」(1983年7月22日放映、原作:28巻「キャラクター商品注文機」)のようにアニメの方がひねりを利かせた題になっているケースもありますが、これらは少数派でしょう。

 結局、アニメ「ドラえもん」サブタイトルの変化の結論としては、「最終的に道具名をそのまま使う事が多くなった」と、なります。

 以上、アニメドラにおけるサブタイトルの変遷について、考察してみました。
 ただし、どちらかと言うと話の中心は、サブタイトルよりも、原作をどのようにアニメ化していったか、ある時期に使える原作はどれだけあったかと言う制作事情がメインになってしまいました。「ドラえもん」は数多くの話が描かれており、原作には事欠かない印象がありますが、帯番組だった最初の2年半で原作のほとんどを使ってしまい、その後は新作頼りであった事は、アニメドラを振り返る上で頭に置いておくべきだと思います。
 放映枠が金曜に移ってから、一時期の例外を除いて新作が週に1話だけであったのも、新作が一月に6話(「小学一年生」〜「六年生」の6誌」)なので、2本立てにするとすぐに原作を消化してしまう事情があったせいでしょうし、実際に学年誌での新作発表が途絶えてから半年後の1991年10月には、原作のストックがほぼ尽きてしまい、アニメオリジナル話を放送するようになりました。

 いずれにせよ、原作単行本では藤子・F先生独特のセンスにあふれた名サブタイトルが付けられていても、アニメでは使われず、ほぼ単なる道具名の羅列になってしまった事は、今から考えると残念です。
 それだけに、再び原作をアニメ化して、サブタイトルも原作通りとなった2005年4月からのリニューアルは嬉しかったのですが、2006年に入ってからは変な煽り文句(サブ・サブタイトル?)が付くようになってしまい、がっかりです。サブタイトルは、そのエピソードの「顔」と言うべき存在なのですから、大事に扱って欲しいものです。

 なお、次回は引き続きサブタイトルの話題として、一度アニメ化された原作がリメイクで再度アニメ化された時のサブタイトルの違いについて考察します。 (2006.12.3)