ドラちゃんのおへや

のび太の名言集

第二章 のび太ののび太

 のび太は時折、その鋭い眼で自らを、そして他人を冷静に観察、分析する。その上で、のび太が自分自身や他人について語る言葉は、その人物の本質を鋭く突いていることもしばしばである。ここでは、そんな言葉を集めてみた。

のび太、己を語る

そんなたいした子じゃないんだから、いえほんと!  2巻「ぼくの生まれた日」

 のび太の長所を一つ挙げるとあるとすれば、「己を良く知っている」ことだろう。この場面では、両親の自分への期待があまりにも大きすぎたために思わず口から出たのだろうが、「自分が、期待に添えるような人間ではない」事がわかっているだけ、のび太は立派である。客観的に見ても、謙遜していると言うわけでもないだろう。

ぼくいっしょうけんめいころぶ……、いやすべるね  2巻「勉強べやの大なだれ」

 これも、上と同様にのび太が自分自身の限界をよくわかっていること表している。しかも、わざわざ「いっしょうけんめい」を付けているところが泣かせる。だが、あきらめが早いのものび太の特徴。別の話ではあるが、ちょっと練習してダメだとすぐにこんなことを言い出す。

ぼくがエッチだったから助かったんだぞ  35巻「ゼンマイ式潜地艦」

 上記二つとは別の意味で、のび太が自分自身をよく理解していることを伺わせる発言。実際には、どう見ても「助かった」のは単に運が良かっただけで、例えば「あとからアルバム」のようにエッチさを発揮して思いっきり失敗していることもある(何もわざわざ空き地でしなくてもと言う気もするが、ここでは触れないでおく)。それはともかく、何事も前向きに考えるのはいいことだろう。

どうやらぼくは二人いるらしいんだ  +1巻「きらいなテストにガ〜ンバ!」

 自らの心の中の「なまけ心」「がんばり心」を差していった言葉。この後、ドラの道具で本当にこの二つの心が出現するのだが、それ以前から、ちゃんと自らを理解している点は、さすがである。わかってはいても、結局「なまけ心」が勝ってしまうあたりも、いかにものび太らしい。

いやなのび太だったねえ  TCS1巻「あべこべ世界ミラー」

 のび太が、性格があべこべの、鏡の中の世界にいるもう一人ののび太を評した言葉。厳密に言えばのび太自身ではないが、自らの醜い部分から目を逸らさずに受け止める事ができるという点では、のび太を評価すべきだろう。もう一人ののび太を「ぼく」などとは呼ばず、あくまで「のび太」と、他人のように言っている当たり、妙に冷静で、のび太らしからぬ印象も受ける。

のび太、他人を語る

なるほど………。いがいに、頭がいいんだな  5巻「ドラえもんだらけ」

 のび太によるドラえもん評。この発言からして、それまでのび太がドラの知能程度をどう思っていたかが想像出来て、実に興味深い。もっとも初期のドラはこんな風に言われても仕方の無いようなことばかりやっていたのだが。
 また「タイムマシンで2時間おきの自分を4人連れてくる」という、冷静に考えれば大して名案でもないドラの思いつき(結局、自分の仕事量は変わらない)に「いがいに、頭がいい」と言う評価を下す、のび太の頭もやはり心配ではある。

なまいきだ。ぼくにさからうなんて  23巻「ボクよりダメなやつが来た」

 念のために最初に断っておくが、これはジャイアンやスネ夫ではなくのび太の発言である。のび太が「のび太よりダメ」な、多目くんに対して抱いた気持ちなのだが、普段ののび太を振り返れば、のび太がこういう発想をすること自体「のび太のくせになまいきな」と言われても仕方のないところだろう。

みるからに頭が悪そうで、ほんとに悪いんだもんね  44巻「恋するジャイアン」

 原作最後期におけるのび太のジャイアン評が、これ。鋭くジャイアンの本質を付いた発言と言えるが、驚くべきはジャイアンの目の前で堂々と言っていること。「のび太も変わったものだ」と、しみじみと思ったものだ。原作後期においてものび太とジャイアンとの力関係は相変わらずだが、「思ったことをはっきり相手に言える」という点で、初期の気弱なのび太から少しは進歩したのかも知れない。

ロボットのヒステリーはみぐるしいものだなあ  26巻「雪アダプターいろいろあるよ」

 のび太の無茶な要求にあきれて怒ったドラを評した言葉。原因は100%のび太にあり、ロボットがどうという問題ではないのだが、こんな時ののび太は妙に冷静に見えて、本当にドラが見苦しく見えてくるので、実に不思議だ。

ばかとロボットは、かぜをひかない  TCS5巻「かぜぶくろ」

 またもや、のび太のロボット蔑視発言(?)。普段は人間同様の友達としてドラと接しているのび太だが、時折ドラをロボットと意識して行う発言には、意外と辛辣なものが多い。ドラが道具として多くのロボットを出して、それを多く使っているが故に、のび太にはロボットを軽視する向きが多少なりともあるのではないだろうか。もっとも、少なくともドラは別格であるらしい事は、大長編「ブリキの迷宮」などで伺う事が出来るのだが。