ドラちゃんのおへや

私の好きなドラ話

ミラドイハさん

 最近、コンビニの300円の「ドラえもん」を何気なく読んで、「ドラえもん」ってこんなに面白かったのかと今さら気付き、三十数年ぶりにてんコミを買い漁りました。1〜45巻と+(プラス)1〜6巻を、未読の巻も既読の巻も全巻買い揃えました。
子供のころに持っていたてんコミを、いつの間にか処分してしまったのが、今となっては悔やまれます。自主規制による改変前の貴重な版だったのに。
先日、藤子・F・不二雄ミュージアムに行ったときに、皆様おすすめの「分解ドライバー」を読んできたのですが、あまりの不条理な面白さに、頭がおかしくなりそうでした。F先生って、どういう人なんでしょう?知れば知るほど分からなくなります。まだまだ未読の話がいっぱいあるし、大全集、全部買おうかな?

 好きなドラ話は多種多様なので選択に悩みましたが、ドラミ登場話から「ハイキングに出かけよう」「ドラえもんとドラミちゃん」「ションボリ、ドラえもん」の3話を選んで、自分なりの感想と考察を述べてみます。もっとも、私は、アニメや映画はほとんど見ていないので、原作に限定した話になりますが。


(1)ハイキングに出かけよう

 この話は、ドラミ初登場話とのことですが、てんコミには+(プラス)も含めて未収録なので、私はコンビニ本で読みました。コロコロ文庫のドラミ編にも収録されていないらしいです。大全集では2巻に収録とか。

 このときのドラミは、まだまだ未熟で、よく知られている「有能で頼りになる、しっかり者のドラミ」とは印象が異なります。物事を強引に力任せに解決しようとしてトラブルを引き起こし、結局は兄のドラえもんを頼る羽目になりました。そのくせ、お節介焼きで、うざったい。(とはいえ、今回、ドラえもんを休ませて元気にすることができたので、ドラミは、ちゃんと役に立っていますが。)

 ドラミのキャラが違うとお感じになる方も多いでしょうし、おそらくは、それが、てんコミ未収録の理由でもあるのでしょう。
しかし、生真面目でお兄ちゃん思いなところは、初登場のときからずっと一貫していて、変わりません。
また、ドラえもんが体調を崩してドラミが助けにくるというのも、このときから後々まで繰り返される黄金パターンです。

(2)ドラえもんとドラミちゃん

 この話は、てんコミでは+(プラス)4巻に収録されています。表紙の絵でドラえもんがドラミをおんぶしている巻です。

 話は、出木杉くんとしずちゃんとのび太の三角関係に始まり、そこにドラ兄妹が乱入して、シッチャカメッチャカのドタバタ劇に発展していきます。
見どころは色々ありますが、中でも、ドラミの泣き顔は希少ではないでしょうか?ドラミは、明るく強い子で、めったなことでは涙など見せませんので。

 と、いうわけで、ドラミちゃんを泣かす方法を知りたい人は、この話を参考にするといいと思います。

(3)ションボリ、ドラえもん

この話は、ここのサイトでも他所でも、色々な方が語って下さっていますが、私も自分なりに述べてみます。

 感想を書くために話を読み返そうとして、まず扉絵で「おや?」と思いました。タイトルの「ションボリ、ドラえもん」とは裏腹に、ニッコリと満面の笑みをたたえたドラミが、ページ一杯に描かれています。しかも、ドラミ以外の人物や物体や背景は何も描かれておらず、ページ全体が ドラミだけで埋め尽くされているという徹底ぶりです。

 それにしても、ドラミは、いつからこんなに立派になったのでしょうか。「ハイキングに出かけよう」のときと比べると、まるで、子供から大人になったようです。今回は、兄のドラえもんも、妹の意外な成長に意表を突かれていました。

 ドラミは、かしこくて働き者なだけではなく、共感能力もドラえもんに劣らず高いと思います。特に「ウラシマキャンデー」の話(てんコミ9巻)などを見ると。
 しかし、ドラミは、どうがんばっても、のび太の「親友」にはなれないから、ドラえもんの代わりはできません。今回ラストシーンのドラミの一言が、それを言い表しています。「(ドラえもんとのび太は)しょっちゅうけんかしても、ほんとはなかよしなのよね。」

 「ドラえもんは、のび太を甘やかしてダメにする役立たずな存在である。」とのご意見は、私も何度か聞いたことがあります。私見ですが、「ションボリ、ドラえもん」の話は、そういうご意見に対するF先生なりの一つの回答ではないでしょうか。「ドラえもんは、のび太の友達なんだぞ。友達のことを、役に立つとか立たないとか、そんなに簡単に軽く考えて、いいのか?」という。

 今回、ドラミが有能さを見せつけたために、ドラえもんは失意のどん底に叩き落とされました。それを、残酷だとか冷たいとかお思いになる方もいらっしゃるかもしれません。
 しかし、ドラミがそれをやったおかげで、ドラえもんとのび太二人の友情の大切さに、当人たちもセワシも気付くことができたのです。ドラミが、ドラえもんとのび太の友情の危機を救ったのです。もっとも、ドラミ本人がそれをどこまで意図していたか、ドラミの真意はどこにあったのか、それは、私には分かりませんが。
 いずれにしても、わざと手を抜いてドラえもんに負けるなどという不正行為は、ドラえもんにものび太にもセワシにも失礼ですし、それでは誰も納得しないでしょう。ドラえもんがいっしょうけんめいやってるのなら、ドラミも、ドラミなりのいっしょうけんめいで応えるべきなのです。
なお、「ハツメイカーで大発明(てんコミ30巻)」でも、ふたたびドラえもんとのび太が大ゲンカして、ドラミがいっしょうけんめい仲裁してました。

 あらためて「ハイキングに出かけよう」と「ションボリ、ドラえもん」とを読み比べると、ドラミの成長ぶりは目覚ましいものがあります。
生真面目で兄思いで、そのうえプライドが高くて負けず嫌いなドラミのことですから、お兄ちゃんの力になれるようにもっと成長したいと思って、人知れず研鑽を積んでいたのではないでしょうか(私の勝手な妄想ですが)。そして、「ションボリ、ドラえもん」で、ドラミは、ドラえもんへの「恩返し」を果たしたのです。

 ドラミには、ドラえもんの代わりはできませんが、ドラえもんを助けることならできます。
いつもドラえもんを見守って、困ったとき、ピンチのときに助けにきてくれます。
ときには、部屋いっぱいの超巨大ドラやきをドラえもんに持ってきて、くるしくて動けなくなるほど食わせてくれたりもします(てんコミ42巻「やりすぎ!のぞみ実現機」)。

 ドラえもんは、自分にそっくりのかわいい妹がいて幸せです。
 ころころふとって、なんてかわいいの、ドラミちゃん。・・・これ、本人に面と向かって言ったら怒るかな?
 まんまる頭の短足兄妹よ永遠に。

管理人・おおはたより
 ドラミへの熱い思いをお書きくださり、ありがとうございます。
 ドラミは、『ドラえもん』という作品の中でも登場が早いにもかかわらず、「ドラえもんとドラミちゃん」で再登場するまでは、長いブランクがありました。ご指摘されているとおり、初登場回の「ハイキングに出かけよう」と、「ションボリ、ドラえもん」を比べると、かなりキャラが変わってしまっています。「ションボリ、ドラえもん」が、一つのターニングポイントになったのは、間違いないでしょう。きっと、ドラミも精神的に成長したんでしょうね。
 このようにキャラクターが成長するのも、『ドラえもん』という作品が長く続いたからこそ、かもしれません。

作品メモ:「ハイキングに出かけよう」藤子・F・不二雄大全集2巻などに収録
「ドラえもんとドラミちゃん」TCプラス4巻などに収録
「ションボリ、ドラえもん」TC24巻などに収録