この「迷作劇場」は、「ドラえもん」の中から、あまり知られていない迷作・珍作をご紹介するという趣旨ですが、今回の「夢中機を探せ」は昨年大晦日のドラえもんスペシャルでアニメ版が再放送されたので、ご存じの方も多いと思います。それでもあえて本作をご紹介するのは、アニメより原作の方がずっと面白いと考えているからです。
原作は6ページと比較的短い方なので、アニメ化に際して原作にない場面を付け足すのはある程度やむを得ないことです。しかし本作に限れば、その付け足しのせいで作品のイメージがかなり変わった感があります。そこで、原作の方をご紹介することにしました。
勉強を始めてもつい気が散ってしまい、ハナクソダーツに夢中になってママにしかられるのび太。そんな姿を見たドラえもんは、のび太に「夢中機」を貸そうという。これを使うと、何にでも夢中になれるのだ。
ドラえもんはポケットから夢中機を出そうとするが、ポケットの中がちらかっているのかなかなか出てこず、ようやく出てきたと思ったら夢中機ではなく、じゃんけんの名人になれると言う「じゃんけん練習機」だった。ドラえもんはこれを使って見せているうちに、なかなか勝てずについムキになってしまう。
その後も夢中機を探すのだが、違う道具ばかりが出てきて、のび太の部屋には置き場がない程になってしまった。仕方なく、のび太が道具を持つことにするが、まだ夢中機は出てこず、のび太の両手両足と頭の上までが道具で埋まってしまう。のび太は苦しがるが、ドラえもんは「落ちたらこわれる」と、のび太には動くなと言う。
更にドラえもんがポケットを探っていると、「空気クレヨン」が出てきた。空に絵が描けるこの道具が懐かしいドラえもんはのび太の部屋を飛び出し、空き地で空気クレヨン遊びに興じる。そこへしずちゃんやジャイアン、スネ夫もやってきて、みんなで遊ぶのだった。
空気クレヨンで遊んでいる間に日は落ちて、空はすっかりくらくなっている。ドラえもんは満足げに「楽しい一日だった」と、鼻息まで出して帰宅。その後夕食の時間になって、ママに「のびちゃんはどうしたの」と言われ、ようやくのび太のことを思い出すのだった。当然、のび太は部屋で道具を抱えたまま。「ごめんつい気をとられて」と言って謝るドラえもんにのび太は、涙を流し、
「夢中機が出てきたらドラえもんが使え」
とさけぶのだった。
(以上、セリフはすべて「夢中機を探せ」本編より引用)
のび太が気が散りやすい事は、言うまでもない事ですが、この話ではドラえもんがそれ以上に気が散りやすい性格に描かれています。おそらく大昔に使ってからずっと四次元ポケットの中に放りこんでいたんであろう「じゃんけん練習機」や「空気クレヨン」を久しぶりに見て懐かしいのはわかりますが、目の前で体中に色々な道具を抱えているのび太の事を考えるとちょっとひどいでしょう。しかし、何か物の整理をしていて思わぬ懐かしい物が出てきた時、それに気を取られてしまうのは誰にもあることで、ドラえもんの気持ちも分からなくはありません。
それにしても気になるのは「夢中機」です。あまりにもそのまんまなネーミングですが、一体どんな形をしていて、どんな使い方をする道具だったんでしょう。機能が「何にでも夢中になれる」と言う事だけに、脳をコントロールするなどの怪しげなイメージが頭に浮かんでしまいます。
さて、冒頭で触れたアニメ版「夢中機を探せ」についてもご紹介しておきます。大筋のストーリーは同じなのですが、空き地でみんな(ただしのび太を除く)で遊ぶ場面で、空気クレヨンだけでなく「ウマタケ」まで出してしまっているのです。これは、空気クレヨンだけでは時間が持たないとの判断からでしょうが、ウマタケが目立ちすぎていましたし、以前ウマタケにひどい目に遭っている(てんコミ1巻「走れ!ウマタケ」)ジャイアンが、その事を全く覚えていない様子だったのも無理があります。結果としては、このウマタケのエピソードがアニメ版を冗長な作品にしてしまった感があります。