久しぶりの更新です。今回は、はっきりとした理由は不明ですがてんとう虫コミックスには収録されていないドラミ初登場作品をご紹介します。
なぜこの話がてんとう虫コミックスに入っていないかという理由はいくつか考えられるのですが、最大の理由は初登場話ゆえのキャラクター・設定の違いにあると考えています。具体的に後期のドラミとどう違うのかは、この話を読んで頂ければおわかりになると思います。
「会社の小山くんは家族連れで温泉へ行ったよ」「おとなりの大川さんはハイキングですって」などと言って、のび太に「うちもどこかへ行こうよ」とねだるパパとママ。ドラえもんにたのんで遊びに行こうというのだ。のび太はドラえもんに旅行の機械をねだるが、ドラえもんの様子がおかしい。ゴロッと寝っ転がって「後で。今なんだかだるい」と、まるでやる気がない。「おいどうした?病気かいっ」と心配するのび太。その時のび太の机の引き出しがあいた。
「こんなことだと思ったわ。ずうっと頼りがないから心配になって見にきたのよ」と、そこへ現れたのはドラえもんの妹ドラミ。ドラミはドラえもんに「くたびれてるみたいね。私たちロボットは年に1日くらいスイッチを切って休まなきゃいけないのよ」と、休養をすすめるが、「いやだあ休みたくない!」と嫌がるドラえもん。しかしドラミは逃げ回るドラえもんを無理矢理押さえつけ、しっぽを引っ張ってスイッチを切ってしまった。ドラミは1万馬力の力を備えていたのだ。
ドラえもんが寝ている間、代わりにドラミがのび太の世話をするという。「君はどんな機械を持ってるの」と尋ねるのび太にドラミが出したのは、何やらセンサーのようなもの。それをドラミがのび太の顔に近づけると「バッチー」と音がした。「けさ顔をあらわなかったでしょ!」と、ドラミ。どうやら清潔度を測る機械だったようだ。ドラミは他にも「そくせき料理機」「自動買い物かご」「ぞうきんクリーナー」などの道具を次々ととり出す。ドラミは家庭科せんもんのロボットだったのだ。それでも、のび太は旅行の機械をねだるので仕方なくドラえもんのポケットを探るドラミは、大きなカバンを取り出した。ドラミが「空飛ぶ旅行カバンだわきっと!」と言うのでのび太はカバンに入ってみるが、ドタバタと音がしてのび太はウサギの姿になってしまった。「あらいやだ。奇術用のトランクだった」。他にも、空飛ぶじゅうたんと間違えて「自動コジ機」を出すなどドラミは間違えてばっかりだが、ようやく「どこでもドア」を出すことができた。
パパとママに「さ、どこへでも連れてってあげますよ」と、のび太とドラミ。「しずかな所がいい」というリクエストを告げてどこでもドアを開けると、食事中のしずちゃんの家だった。のび太が「もっと遠いとこだよ。電車に乗って行くような」と言うので、「電車に……」と行ってドアを開けるドラミだったが、そのとたんに人がなだれ込んできた。駅のホームで電車を待つ人たちだったのだ。おこるパパとママだったが「行き先をはっきりさせないからよ」とドラミが言うので、見はらし峠に行くことに決めたパパ。のび太は「見はらし峠の頂上へ行きたい。頂上というのは一ばん高い所だぞ」と言ってドアを開けたが、そこは見はらし峠の頂上に生えている木のてっぺんだった。「高すぎるよっ」とのび太。
それでもどうやら無事に見はらし峠について、ハイキングを楽しむのび太たちだったが、散らかり放題のゴミを見つけたドラミは、家庭科ロボットであるが故なのか、「ゴミ磁石」を出し、のび太たちにゴミ拾いをさせるのだった。そのうちに雨が降ってきたので4人は家に帰ろうとするが、ドアが開かない。そこでドラミは、勢いをつけてドアをぶち破るのだった。しかし、大勢のハイキング客が雨宿りをしようと家の中に入ってきてめちゃくちゃになる。あわててドラえもんを起こすのび太。
何とか騒ぎを静めたドラえもんは「かってになんでも取り出すからだ。ドラミは機械に弱いんだな」と、困り顔。それでもドラえもんは一日休んで元気になったので「ご苦労さま。じゃ、またね」と、ドラミにお礼を言って22世紀に帰そうとするが、ドラミは「ここが気に入っちゃったからずうっといるわ」と言い出すのだった。
「寝る前には歯をみがくのよ。のび太さんは下着をかえて、にいちゃんはポケットの整理をしてそれから…」と、口うるさいドラミにうんざりのドラえもんとのび太。
「あのチビ帰せないの?」
「1万馬力だからなあ」
(以上、セリフはすべて「ハイキングに出かけよう」本編より引用)
というわけで、ドラミ初登場はこんなお話でした。この話で描かれているドラミの姿は、現在の「ドラえもんより優秀な妹ロボット」というイメージとは大きな違いがあります。まず、別に優秀なロボットとして描かれているわけではなく、むしろ「家庭科専門で口うるさい」「機械に弱い」など、欠点がいくつも見られます。それに現在のドラミに比べ、このころのドラミは1万馬力を思いっきり発揮するなど、乱暴者である印象すら受けます。
また「ここが気に入っちゃったからずうっといるわ」などと言った割には、当時の連載では翌月掲載の「ジキルハイド」には、ドラミは影も形もありません。「ずうっといる」というのはせいぜい1カ月以内だったようです。てんとう虫コミックスからこの話が外されたのは、このように後の話に続かないせいだったのかもしれません。
いずれにせよ、このようなドラミの違った一面をてんとう虫コミックスで見る事ができないのは非常に残念です。この「ハイキングに出かけよう」がもっと世に知られていたら、ドラミは単なる優等生ロボットではない事がよくわかっていただけるのに、とつくづく思います。