僕の好きな話で、「無人境ドリンク」というのがあります。
のび太はまずいやな事ばかりあって、一人になりたいと思い、
ドラえもんに言って、「無人境ドリンク」をもらう。
そして彼がそれを飲むと、周りには誰もいなくなる。
(とはいっても、そばにいないだけ。物理的に消滅したわけではない。)
そして当分の間、彼は気楽に時を過ごすのだが、やがて彼は寂しくなって、
彼の周りの多くの人を恋しがる。
夕方、帰宅してもママやドラえもんはいなかった。ついに彼はワアワア泣き、
そして泣きながら寝入った。(その頃にはドリンクの効き目は切れていた)
翌朝、のび太は遅刻しそうだと慌てて、学校に行ったのだが、教室には誰も
いない。またも彼は泣いた。「僕は永久に孤独地獄から抜け出せないんだ」
ドラえもんいわく、「今日は日曜日なんだよ。早く帰っておいで。」
とまあ、全然簡潔にならない文章でしたが、多分知っていると思います。
これに類似したものとして、「どくさいスイッチ」というのもあります。
どちらも、のび太が人間不信になって、エゴにかられて人を自分の周りから
消し去り、しかし最後には寂しくなって自分のエゴを悔やむ、という話です。
これらはちゃんと教訓めいたところがあって、それでありながら過ちをおか
した人を、奈落の底に落すのではなく、更生させるという素晴らしい結末で
話が終っています。それに、泣き寝入るのび太にドラえもんが毛布をかけて
あげるシーンもあり、またラストシーンも傑作です。
本当に、「ドラえもん」は掘り下げてみると限りないものですね。
藤子作品では顔をあまり複雑にかかず、それでありながら表情をうまく表現
している、というのが印象的です。特に、のび太やオバQなどが号泣するシ
ーンは、涙が噴水のように湧き出るようにかいてあるのが素晴らしい。
管理人・おおはたより
両作品とも、のび太が孤独の世界で一人っきりになってしまう展開ですね。「ドラえもん」の中ではどちらかというと教訓色が強い方ですが、いい話だと思います。
「どくさいスイッチ」の方は、一体どんな仕組みの道具なのか小さい頃に悩みました。
作品メモ:「無人境ドリンク」TC38巻
「どくさいスイッチ」TC15巻、FFランド(絶版)18巻、文庫エスプリ編、自選集下巻に収録