私は世代的にちょうど大山版ドラえもんの中期、それも後半辺りからドラえもんを見ていた世代なのですが、とても思い出に残っているお話がありますので話させて戴きます。
それは「あべこべの星」というお話です。タイトルバックは「オレンジ」、まさに中期のお話でした(オレンジタイトル最終回)。記憶が確かならばTVSPでの放送だったと思います。
いわゆる黄金期とよばれる緑色タイトルバックの頃に「新しいお話と中期の再放送」という構成でも、そして黄金期のTVSPでも見た覚えのある作品です。
内容はのび太が「りこうになりたい」という願いを書いた短冊をなぜか十五夜に吊るしているところから始まります。ドラとのび太が他愛もない話をしていて何時しか星の話になるんです。
ドラえもんにどこがどこの星なのかを教えて貰うんですがいまいちわからず、のび太がなんと、向かいの家のアンテナを基準にして「あのアンテナから何個くらいうえ?」などと聞くのです。子供ながら大笑いした思い出があります。
ドラえもんも律儀に「いちにぃ・・・」と数えるのですが「ああもうわかるはずないでしょう、馬鹿だな」と一喝。「りこうになりたい」と短冊に書いたくらい、その時のび太は「馬鹿」という言葉に敏感だったため、何度も馬鹿を繰り返すドラえもんを責めます。
「悪かったよ」とドラえもんは未来の望遠鏡を出すんです。未来の望遠鏡は星に矢印をつけられたりとわかりやすく、のび太もすぐに理解しました。しかしまたしてもドラえもんに「馬鹿」と言われてしまいます。そのわけは「地球を見ようよ」と言い出したからです。このシーンは鮮明に覚えてます。
しかし、F氏のいう「SF」(すこし ふしぎ)のまさにソレと取れる話の展開になるわけです。常識から離れていく瞬間かもしれません。そしてドラが切り出します。「地球と同じように人類の住む星が広い宇宙のどこかにあるかも」と。そして見つけてしまうのです。大長編「のび太と鉄人兵団」でも表現された地球と全くあべこべの星を。
気になった二人はその星へ・・・。子供ながらワクワクして「早くCMあけないかな・・・」と思ったものです。
たどり着いた星には、いつもの「スネオ」「ジャイアン」「しずか」「ドラえもん」「パパ」「ママ」そして「のび太」など、主要キャラクターは全員居たのです。しかしあべこべのため性別が逆に・・・
パパが「のびちゃん」といったり「のび太」が女の子で天才、そしてなぜだか「のび太をダメにするために」という理不尽な理由でやってきた女版ドラえもんもいました(語尾は「だわさ」)。
道具はタケノコプター(たけのこの形をしていて、付けて飛ぼうとしても地面に埋まる)、どこだかドア(どこだかわからないところに繋がる)、そらとぶふろしき(空を飛べるが格好が悪い)。
ジャイアン(女)がスネ夫(女)にいじめられていたり、しずか(男)がちょっと頭悪かったりと。もう私はTVで広がるパラレルワールドに釘づけでした。
物語はあべこべの住人ののび太(女)が「馬鹿になりたい」という願いをもっていた為、少しのあいだ入れ替わるというもの。そしてお互い学校や放課後を過ごしますが、やはり少し違う。
あべこべのドラえもんは「あんたじゃ役に立てそうにないわ」と。この時、そんなに頭悪いのか・・・と思いました(笑)。標準のドラえもんは「君じゃ、僕なんかいなくてもいいもの」と少しさみしそうに天才のび太に言います。
そうして結局元通りに帰るのですが、うらやまで地球をみていたドラえもんはこう言います。
「僕たちの世界と比べて少し緑が多いと思わない?」
「色々と見習わなくちゃ、ね」
子供のころは流して聞いていたセリフでしたが、今になってみるとこちらとあべこべにあっちは「緑が増えていってる」のかなと思います。森林伐採とかの問題に触れるちいさなメッセージだったのかもしれません。
色々と長くなってしまいましたが、こんなところです。
あべこべの星は「猫がわんわん」ないたりするのですが、「猫の反対は犬なのかな?」とか考えてしまってました。(笑)
管理人・おおはたより
「あべこべの星」は、前半で原作の最後まで終わってしまったので、「これからどうするんだろう?」と思って観ていたら、女版ドラえもんが出てきてびっくりした覚えがあります。後半はアニメオリジナルの展開でしたが、役立たずの道具や「だわさ」喋りのあべこべドラえもんは面白かったです。
1990年代前半には大長編「のび太とアニマル惑星」や「のび太と雲の王国」で環境問題が取り上げられていますから、アニメスタッフもそれを意識した上で、あべこべの星の緑の多さについてのセリフを入れたのかも知れませんね。
作品メモ:アニメ版「あべこべの星」:1992年10月2日放映、DVD「ドラえもんコレクションスペシャル 秋の1」に収録
(原作「あべこべ惑星」TC17巻、FFランド(絶版)26巻、文庫未来編に収録)