私がお薦めは「赤いくつの女の子」です。
部屋がガラクタだらけでママに叱られるのび太、部屋をドラえもんと一緒に片付けてる途中で赤いくつを見つける。
それは、もっと小さかった頃に仲良しだったノンちゃんにジャイアンとスネ夫にからかわれてついしてしまった意地悪の心が痛む思い出の品だった。
その意地悪のあくる日からノンちゃんは病気になって出てこなくなり、一週間程過ぎて幼稚園から帰ってきたのび太はノンちゃん一家が引っ越した事を知らされる。
ノンちゃんと逢えなくなり、心にもない意地悪をしてしまった事がずっと気がかりで、きちんと謝っておきたかった、お別れも言いたかったと後悔してる事をドラえもんに告げる。
するとドラえもんがタイムマシンで謝りに行こうと言い出す。タイムふろしきで幼稚園の頃の姿に戻り、ノンちゃんにくつを返し、お別れを言い、心のわだかまりがやっとなくなったのび太であった。
そして今度はノンちゃんからもらったままごと道具をママにガラクタ扱いされて怒るのび太だった(笑)
この話は実は何回読んでも身につまされる思い出があります。
自分も小学校低学年くらいまでは女の子とばかり遊んでる様な子供で、そして他の子にからかわれてしたくもない意地悪を女の子にして後悔した覚えがあるからです。勿論本当はその子と仲良く遊びたかったんですが。
自分の恥だし、のび太の様にもう謝る事は出来ないのですが、多分こういう思い出のある男の子も結構いると思います。
近い体験がF先生にもあるのではないでしょうか。だからこういう思い出のある子に漫画の中だけでもわだかまりはなくしてくれたのではないかと。
そしてきちんとオチがあるというとこも良いですww
そのオチは『エスパー魔美』の「問題はカニ缶!?」にもつながる様なのび太の怒り。
大事な思い出をガラクタ呼ばわりされたのび太の怒る気持ちがまたわかるのですよね。
私は基本的にギャグとしての『ドラえもん』が好きで、「テストにアンキパン」や「ドラえもんだらけ」といった作品が好みなのですが、自分の子供の頃の思い出を重ね合わせて色々思いを巡らせる事が出来る(ただそれはのび太同様胸が痛い思い出なんですが)「赤いくつの女の子」を選びました。
きちんとギャグとして最初のネタと最後のコマがつながってるとこもいいですよね。
でも本当にきちんと謝る事が出来てのび太は良かった。
管理人・おおはたより
この話はいつもの三人ではなく、引っ越ししてしまったノンちゃんとの別れが描かれているせいか、昔から異色のイメージがありました。幼少のジャイアンやスネ夫は出てきますが、この話では単なる悪役ですし、幼年しずちゃんに至っては出番がありませんから。
そんな、「ちょっと雰囲気の違う話」ですが、歳を取れば取るほど味わい深く感じます。小学生にとってはたかだか4,5年前の出来事ですが、大人になると何十年という時を隔てた遠い過去ですから、その分だけ話に重みが増していると思います。現実では、悲しい思い出を修正する事は出来ませんから、余計に身につまされる思いになりますね。
作品メモ:「赤いくつの女の子」TC6巻、FFランド(絶版)15巻、文庫恋愛編・のび太グラフティ編に収録。