私の好きなドラ話。
大人になって読み返すと当時とは違った感じ方をするとはよく言われますが、私にとって藤子・F・不二雄先生
はまさに永遠の憧れです。時間が経てば経つほど、先生の作品に惹かれていく自分がいる事に気が付きます。
さてドラえもんのてんとう虫コミック全45巻の中で私が一番好きなのは12巻です。実に粒ぞろいで、「何か
一冊買ってみよう」「読んでみよう」と思う方がいたらこの12巻をお勧めしたいなと勝手に思っています。
その12巻の中で「ベロ相うらない大当たり!」「ゆうれい城へひっこし」の2つが特に評価の対象として有名
……と勝手に思っていますが、今回は「けん銃王コンテスト」を紹介したいと思います。
映画ドラえもんなどでも重要なテーマとなったりする、のび太の射撃の腕前。この設定が初めて明確にされた作品
(某サイトより)。
そののび太に活躍の場を与えるためにドラえもんが『空気ピストル』という道具を出します。近所の友達を集めて
、それぞれが両の手に計10発の弾を持って散らばって、町中で出会って対決していくという西部劇ごっこ。
この話ではのび太が実に自信を持っていて落ち着いています。殆ど全員を雑魚扱いしてしまい、普段はバカにされ
ているスネ夫も問題外で倒します。
そしてラスボスはジャイアン。このジャイアンの悪役っぷりがまた最高です。
のび太が「あと3発も残っている」と独り言を言っていると、それを隠れて聞いていたジャイアンが口笛を吹いて
3匹の犬を呼び寄せてそれをのび太にけしかけます。何という魔術のようなスキルでしょう!
「フフフ、それで全部の弾を使い果たしたわけだな」
「こっちは10発全部残っている」「最初から隠れていたからな」
「ひきょうだぞ」というののび太に対し、
「うるせえ。勝ったものの勝ちだ」
絶体絶命という所でのび太が機転を利かして、倒した一人に走り寄ってその手をとって「バン!」
のび太「みんなすっかり僕のことを見直したよ」ドラえもん「それはよかった」
この話ののび太は実にカッコいいです。のび太らしくないとも言えますが、溜飲を下げる思いで見てしまったりも
します。
そしてラストはママに手を向けながら「バンごはんまだ?」と言うと、実は10発全部使っていたと思っていたのが
のび太の数え間違いで1発残っていて、ママに空気ピストルが発射されてしまう……
のび太のドジさが発揮されるというオチもしっかりとついています。
のび太がいじめられて、ドラえもんが仕返しの道具を出す、黄金パターンですが毎回それだけでは長い連載は続け
られない、という風にF先生自身が言っていましたが、まさにそうしたバリエーションの一つで、のび太の射撃のファ
ンを作り、雑魚に魅力的なラスボス、山あり考える(数える)要素あり、オチがあって色々な要素が詰まった話だと思い
ます。
管理人・おおはたより
「けん銃王コンテスト」は、PENGOさんも書かれているようにジャイアンの悪役っぷりが最高に素晴らしいですね。
のび太の拳銃の腕前は、相手がいることによってより引き立つわけですが、その意味ではこの話のジャイアンは『のび太の宇宙開拓史』のギラーミンとも並ぶほどの素晴らしい悪役を演じたと思います。
作品メモ:「けん銃王コンテスト」TC12巻などに収録