ドラちゃんのおへや

アニメ制作なんてわけないよ

第4回「アニメ版・復元光線」

 当サイトには、「ドラえもん」単行本でのセリフの変更事例を取り上げた「復元光線」のコーナーがありますが、アニメ版でも再放送などで一部の映像やセリフが、何らかの形で変更されている場合があります。特に、近年再放送されたエピソードで、話題になったものもありました。
 そこで、本コーナー第4回はアニメ版の「復元光線」として、本放送と再放送で何か内容が変わっているエピソードを紹介します。

No.サブタイトル本放送日時再放送日時変更内容
(1)ドラえもんのびっくり全百科1980.1.21988.12.31冒頭のお正月シーンをカット、サブタイトルコールも当時の新作と同じオレンジ色背景に差し替え
(2)トカゲロン1985.4.261997.10.31ドラえもんがのび太の所に着いた時の「ニンニンニンニン」というセリフをカット
(3)ペーパークラフト1990.3.162003.12.31ドラえもんが読んでいた漫画本「オバQ」の表紙を塗りつぶして、タイトルとQ太郎らしき絵を消した
(4)(1998年2月13日以降の再放送)--------道具の出る場面などの点滅を静止画に変更
(5)カミナリだいこ1992.2.141999.4.23(4)の最も顕著な例。道具「カミナリだいこ」の作用による雷の点滅が全てコマ落としされたため、雷が鳴るたびに、ほぼ全編にわたって動きがぎくしゃくしていた。
(6)ドラえもんめいさく劇場
マッチ売りの少女
1993.5.212004.12.17おねしょに関わるナレーション及び静香のセリフを変更して、おねしょの跡が残るベッドも画面全体を青くして隠した。

 それでは、一つずつ解説していきます。

 (1)は、本放送が「お正月だよ!ドラえもん」内だったため、お正月風景を描いた場面が冒頭に付いているのですが、それを「大晦日だよ!ドラえもん」で、そのまま流すのは時期的にそぐわないと判断されたのでしょう。お正月を思わせる場面は丸々カットされて、その編集作業に伴いサブタイトル画面も変更されたと思われます。
 この再放送版を観ると、サブタイトルコールから本編に入る部分で音声が少し切れていますので、本放送版を知らない人でも不自然に感じたのではないかと思います。現在リリースされているビデオ・DVDでは、もちろんオリジナルのままで観ることができます。
 本話は、お正月場面をカットした上で「大晦日だよ!ドラえもん」で放送されましたが、基本的に大晦日特番では「お正月」を描いたエピソードは再放送が避けられています。そのようなエピソードは、1995年までは「お正月だよ!ドラえもん」内で再放送されましたが、1995年本放送の「おたのしみお年玉ぶくろ」だけは、1996年以降のお正月特番消滅に伴い、一度も再放送されませんでした。

 (2)(3)は「ハットリくん」「オバQ」と、「二人で一人の藤子不二雄」時代ならではのキャラクターに関連する場面ですので、藤子不二雄A先生との権利問題に配慮して、修正したと思われます。
 まず、(2)のドラえもんのセリフは「忍者ハットリくん」の口ぐせを消しているわけですが、直前に「やーまをとーびー、たにをこえー」と、「ハットリくん」アニメOP主題歌を歌う場面はそのまま残されているので、わざわざ「ニンニンニンニン」だけを消した意味があるかどうか疑問です。
 (3)については、はっきりとしたことは分かりませんが、原作単行本が未だに絶版となっている事実からも、「オバケのQ太郎」の権利関係が複雑になっていることが伺えます。最近では、映画「ドラえもん のび太の太陽王伝説」(2002年)に登場したオバQっぽいロボットも、関連書籍では「オバ・ロボ」と、ぼかした名前で紹介されていました。
 ただし、(2)は1989年「大晦日だよ! ドラえもん」、(3)は1996年11月1日放送分で、それぞれ本放送版のまま再放送されています。両方とも、すでに「藤子不二雄」コンビ解消後の時期ですので、この問題については1997年以降に配慮が過剰になってきた感があります。

 (4)に関しては、今更説明する必要もないでしょう。
 1997年12月16日に放映された「ポケットモンスター」第38話にて、いわゆる「パカパカ」と呼ばれる激しい点滅表現により「光感受性発作」を起こして多数の視聴者が倒れた事件に伴って策定された、「アニメーション等の映像演出手法に関するガイドライン」に従い、1秒間に3回を越える映像や光の点滅を避けた結果です。
 「ドラえもん」では、この事件が起こるまでは毎回のように道具登場シーンで点滅が使われていたので、これ以降、道具を出す場面のない一部の話を除き、ほぼ全てのエピソードの再放送で静止画修正が入るようになりました。
 その、最も顕著な例が(5)です。たたくと本当に雷が落ちる「カミナリだいこ」の登場する回で、雷の場面はほぼ全て点滅を伴っていたため、ことごとくコマ送り処理がなされて、まるで紙芝居のような不自然な画面になっていました。ここまでして再放送する意味があるのか、疑問に思ったほどです。あまりにひどかったので、特にご紹介しました。

 (6)は、おそらく大山版ドラでは最後の例でしょう。火遊びをしたせいでマッチ売りの少女(しずか)がおねしょをしてしまうオチが付いていたのですが、この部分のセリフが

 ナレーション「その夜、マッチ売りの少女は…おねしょしてしまいました」
 しずか「火遊びなんかするんじゃなかったわ」

から、

 ナレーション「その夜、マッチ売りの少女は…(以降をカット)」
 しずか「子供は火遊びしちゃいけないのよね」

へと、変更されました。しずかのセリフは録音し直したのでしょう。画面もしずかの顔以外が青く覆われ、おねしょをしたベッドが見えなくなっています。
 これは、イマイチ変更理由がよく分かりませんが、当サイトの以前の掲示板(2004年12月を参照)でも話題となり、当時放火事件が相次いでいたことに配慮した説などが挙げられています。
 わざわざ画面と音声に手を加えてまで再放送したのは、「ドラえもん めいさく劇場」が24話しかなく、代替エピソードが存在しなかったためと思われます。

 以上、私が確認できた範囲で、再放送時に画面・音声等で何らか修正が行われたエピソードを紹介しました。
 ここに挙げた以外にも、再放送時に一部の場面がカットされた話があるのですが、(1)の例のように内容的に問題があったのかどうか、またどの場面がカットされたか、などの詳細が確認できないものが多いため、今回は省きました。

 アニメは、原作マンガでセリフを変えるほどには簡単に手直しが出来ないからか、原作ほど変更例は多くありません。また、どうしても直しようのない問題がある場合は、諦めて再放送・ソフト化しないと言う選択肢も取られます。事実、A先生との権利関係に配慮してか、「ニンニン修業セット」や「怪物くんぼうし」はソフト化されていません。

 今回紹介したような、不自然に内容が変わるような変更は歓迎できませんが、一度セリフが変わってしまえば以降ずっとそのままの原作と違って、アニメ版は(1)のようにソフト化されればオリジナル版が観られる可能性がありますので、その意味ではテレビ再放送でしか観ることのできない改変版の方が、ある意味では貴重と言えるかも知れません。 (2005.12.1)