ドラちゃんのおへや

コロコロ文庫をぶっとばせ

特別企画「ハッピーバースディ・ジャイアン」

 今回の更新日は6月15日。言わずと知れた、ジャイアンこと剛田武氏の誕生日です。そこで、本コーナーでは誕生日を祝した特別企画として、ジャイアンに関する話を特集します。
 と言っても、てんとう虫コミックス収録作品については、既にコロコロ文庫で「ジャイアン編」としてまとめられていますので、今回は、てんとう虫コミックス未収録の、あまり知られていない作品の中からジャイアンが活躍する話を、特に選んでご紹介したいと思います。ジャイアンの知られざる一面が、明らかになるかもしれません。

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ジャイアン大活躍

サブタイトル巻数初出作品内容
スーパージャイアン+2三・79・4 スーパーマンになれるマントを付けて、ジャイアンがスーパージャイアンになった。喜んで正義のために出動するジャイアンだが、あまりに頻繁に呼ばれるので不機嫌になって…。

 「スーパーダン」などにも通じる、ジャイアンのヒーロー願望が現れた話。全裸で空を飛ぶ姿など、ジャイアンファンにはたまらない(?)カットもあり、一見の価値はある。
人気歌手翼ちゃんの秘密+5六・86・1 あの翼ちゃんにボーイフレンドが!?。しかものび太の町の近所に来ているらしい。翼ちゃんに会いたいドラとのび太は「特定人物レーダー」を使って翼ちゃんをさがすが。

 この話では、「おれは有名になりたいよォ」と叫び、翼ちゃんを捜す雑誌「フライカス」のカメラマンに自分を必死に売り込こもうとするジャイアンの姿が描かれ、読者の涙を誘う(?)。最終的には、このジャイアンの強引な売り込みが翼の秘密を守ることになる(木に登って翼の恩師宅を覗こうとしたカメラマンを、ジャイアンが歌声で木から落としてしまう)のだから、本話の表の主役が翼だとすれば、ジャイアンは裏の主役と言えるだろう。
クエーヌパンFF10三・75・4 食いしんぼのジャイアンを懲らしめるために、ドラえもんは「クエーヌパン」を出した。これを食べると、口が食べ物をはね返すようになり、しばらく何も食べられなくなるのだ。

 本話の一番の見所は、のび太のソーセージやスネ夫のケーキを横取りして食べるジャイアンの、実に幸せそうな顔。ケーキの臭いをかぎつける、強力すぎるジャイアンの嗅覚も見逃せない。雑誌「ぼく、ドラえもん」1号付録に再録。
痛みはね返りミラーFF11一・76・9 いつも通りのび太に乱暴するジャイアン。みかねたしずちゃんが「らんぼうするのはいけないことよ。」と諭すが、ジャイアンは「なまいきいうと女でもなぐるぞ」と…。

 しずちゃんに「ほんとに強い人は、やたらに弱い者いじめなんかしないのよ」と説得されて、「二度と、このげんこつをつかわないことをちかう」と、考えを改めるジャイアンの姿は、男らしくて格好いい。まあ、結局は調子に乗って周囲の人間がジャイアンにちょっかいを出したあげく、ジャイアンの怒りが爆発してげんこつの変わりにバットを持ち出すのだが。ともかく、いつもと違うジャイアンが観られる貴重な一編。
ジャイアンのけんか相手をさがすには、「暴力エネルギー探知器」が有効です!!---五・85・3 ジャイアンの機嫌が、かなり悪そうだ。でっかいケンカでもしてスーッとしたいと言っている。そこで、ドラえもんが出したのが「暴力エネルギー探知器」。これを使って、となり町で「けんかがメシより好き」な少年(「パーマン」のカバオと「オバQ」のゴジラを混ぜたような顔)を見つけだし、ジャイアンとケンカをさせる。
 実力伯仲で勝負が付かず、毎日ジャイアンとその少年はケンカをするようになり、ジャイアンはむやみに乱暴しなくなった。しかし、よかったと思ったのはつかの間、少年が引っ越してしまい、再びジャイアンは凶暴化するのだった。

 この話では、とにかくジャイアンの凶暴性を全面に押し出して描かれており、大長編のジャイアンとは別人としか思えない。また、ジャイアンのケンカ相手の顔と、ケンカが「メシより好き」との言葉にニヤリとする藤子ファンも多いだろう。雑誌「ぼく、ドラえもん」22号付録に再録。
鬼は外ビーンズ---二・85・2 うっかり歌のことでジャイアンをおだてたせいで、毎日ジャイアンがスネ夫の家に歌の練習に来るようになった。ドラえもんは、ぶつけたものが外へ出ていく豆「鬼は外ビーンズ」を使って、ジャイアンを骨川家から追い出そうとする。

 この話で印象的なのは、何と言っても「天才」とおだてられて、豆で外に出されているとも知らずに熱唱するジャイアンの姿。単行本未収録作品では、ジャイアンが最も歌いまくっている作品だろう。雑誌「ぼく、ドラえもん」24号付録に再録。

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その他ジャイアンの見所

サブタイトル巻数初出作品内容
ばくはつこしょう+3一・77・11「どうしてもあれがほしいぞ」と、異常なまでに、のび太の持っている「はくはつこしょう」に執着するジャイアンが見所。詳しいあらすじは、こちらを参照
百万ボルトひとみ+4三・78・12「百万ボルトひとみ」の力でのび太を好きになったジャイアンが見もの。「おれのこときらいにならないで」とのび太を追い回し、「そばにいさしてくれるだけでいいの」と、のび太の服をつまむジャイアンの表情が実に可愛らしい。オチで、百万ボルトひとみを付けて鏡を見たため、自分を好きになって「死んでもそばにいるんだあ」と、鏡にしがみつくジャイアンの姿も見逃せない。
イイナリキャップ+5五・73・12ジャイアンと、犬のムクとの友情が描かれたエピソード。ジャイアンは、ムクを子犬の時からずっと育てていたことがわかる。「イイナリキャップ」の力で、ジャイアン同様、乱暴にしゃべるムクも見所。
雲ねんどTCS5一・73・4自分で好きな形の雲を作ることが出来る「雲ねんど」。「かっこいいものをつくるぞ」と言ってジャイアンが作ったのは、彼自身。「おれをつくったぞ。かっこいいなあ。」と、雲の自分を満足げに眺める姿は、ジャイアンのナルシストぶりがよく出ている。
自動人形げきTCS6二・80・3「自動人形げき」で、無理矢理「さるかにがっせん」のさる役にさせられてしまうジャイアンが見所。その前の普通の人形劇でのやりたい放題も、いかにもジャイアンらしい。あらすじはこちら
ドラえもんの歌FF1四・71・10本筋は、ここで紹介したように、ドラえもんが狂ってひどい歌を歌いまくる話だが、なんと本話は「ドラえもん」連載史上ではじめてジャイアンが独唱会(当時はこう言った)を開いた記念すべきエピソード。歌声は、はじめから「ボエー」だった。
かわり絵ミラーFF8二・76・3冒頭、見る向きによって絵が変わる帽子を自慢するジャイアンと、それを「ぼくなんか幼稚園のころ買ってもらった」と笑うのび太のやりとりが、「N・Sワッペン」と全く同じで面白い。「ぼく、ドラえもん」8号付録に再録。
キングコングFF13一・76・11スモールライト(の拡大機能)で大きくなった猿対ジャイアンの戦いが見られる。ジャイアンのキングコングは、はまりすぎ。また、本話ではスモールライトに解除光線だけでなく、元々普通の大きさの物も大きくできる事になっていて、ビッグライトの立場がなくなっている。
ついせきアロー---三・85・10「おれはな、一日一かいのび太をなぐらないと、めしがまずいんだ。」と言って、のび太を探すジャイアンが登場。いかにもジャイアンらしい自分勝手な論理。
こころふきこみマイク---三・87・4「こころふきこみマイク」で相手にさせたいことを吹き込むと、その通りのことをする。ジャイアンに殴られたのび太は、ジャイアンに謝らせようとするが、いくら吹き込んでも、ジャイアンはなかなか謝らない。結局最後には謝るが、ジャイアンの精神力の強さが垣間見られるエピソード。

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 以上、ジャイアン主役と言っていい作品6編と、他にジャイアンに見所がある作品として10編を選んで、ご紹介しました。いずれも、ジャイアンらしさがよく描かれていると言えましょう。残念ながら、「ぼく、ドラえもん」で再録された3編以外は、現在は読むことが難しくなっていますが、いずれもジャイアンファンの方には特にお勧めの話ですので、図書館や古本屋などで、機会があればぜひ読んでいただきたく思います。

追記
 この企画の発表後、ここで紹介した作品の多くが、「ドラえもん プラス」や「ぴっかぴかコミックス」などの単行本に収録されて、容易に読む事が可能となりました。よって、単行本巻数は、現在入手可能なものに直しています。
 本文については、「埋もれたジャイアンの活躍を紹介したい」と言う意図によるものなので、あえて直していません。以上、ご了承下さい。

「コロコロ文庫をぶっとばせ」特別企画 おわり (2004.6.15)