「コロコロ文庫をぶっとばせ」第1回です。記念すべき第1回のテーマを何にしようか色々と迷った末に、少々季節はずれの感もありますが、「台風」に決めさせていただきました。ドラえもんによると「二十二世紀には台風なんか上陸する前に、消しちゃう」そうですが、それにもかかわらずドラえもんは台風に関係する様々な道具を持っています。今回は、そんな道具たちが活躍する話や、台風そのものをメインテーマとする話を集めてみました。
サブタイトル | 巻数 | 初出 | 作品内容 |
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台風のフー子 | 6 | 二・74・9 | のび太が孵した台風のたまごから生まれた台風のフー子。フー子は、のび太になつくが…。 |
台風発生機 | 14 | 四・74・10 | ジャイアンに仕返しするために、「台風発生機」で作った小型台風をジャイアンの家へと向かわせるが…。 |
ジャイアン台風接近中 | 35 | 六・84・9 | 本当の台風は登場しない。怒っている人間の動きを台風のように表示する「怒りエネルギー観測チャート」が登場。 |
ねじ式台風 | 39 | 一・82・10 | 「ねじ式台風」はねじを巻くと動く小型台風。小さくても力は強い。この台風の起こす風に乗って遊ぶことも出来る。 |
台風トラップと風蔵庫 | 40 | 四・83・10 | 「台風トラップと風蔵庫」は、台風の一部をとらえてしまっておく道具。台風の進路を見る「台風チャート」も登場。 |
台風遊び | TCS4 | 一・79・9 | 「安全ガス」を体にかけて、「風乗りヨット」で台風と遊ぶ。「台風ネット」で町も安全。 |
コース決定機 | TCS6 | 二・78・10 | 大型台風が接近。野比家の屋根がいたんでおり、パパは修理しようとするが、釘がない。のび太に釘を買いに行かせるが、途中でカナリヤを逃した静香と出会う。そこでドラは、決めたコースを通す事の出来る「コース決定機」を出して…。 |
ミニたいふう | PC8 | 一・76・10 | 「台風トラップと風蔵庫」に似た「かぜをためるきかい」が登場。風船にかぜをためて、ドラとのび太は様々な遊びに使って楽しんだり、かぜの勢いで空を飛んだりする。 |
無題(かぜのロケット) | --- | よ・70・10 | 台風を面白がり、大きな袋で台風のかぜを集めるドラえもん。翌日、その袋から風を出して、空を飛んで遊ぶのだった。「ミニたいふう」の原型的作品。 |
以上が、台風に関する道具が登場するか、又は台風がメインテーマとなっている作品群です。台風の登場する話はてんコミだけで6編もあったので、未収録作品を探せばもっとあるかと思ったのですが、そうでもなくて意外と少なく、全部で9作品でした。これだけでは、文庫本を出すにはちょっとページ数が足りませんね。
この「台風」ネタですが、初出誌が全て9月号か10月号である事からわかるように、「ドラえもん」でよく使われる「季節ネタ」の一つだったのでしょう。どちらかというと、子供は台風をおもしろがったり、風が強くなると興奮したりするところがありますから、ある意味「台風」は子供にとって季節のイベントの一つであり、小学生に向けて描かれた「ドラえもん」では取り上げやすい題材だったと思われます。
それでは、各作品について見ていきましょう。まず、「小学一年生」に掲載された「ねじ式台風」「台風遊び」「ミニたいふう」の3作品は、いずれも台風の力を使って楽しく遊ぶ話で、ドラえもんの道具が純粋に遊びの道具として描かれることの多い「小学一年生」らしい作品です。また、「よいこ」に掲載された「かぜのロケット(仮題)」も「ミニたいふう」に似た内容であり、今回リストに挙げた中では最も古い作品ですので、台風テーマ作品の原型と言えます。
この「小一」向けに描かれた作品群の「台風のエネルギーをためる」と言うアイディアを利用して、少し高年齢向けに仕上げたのが「台風とラップと風蔵庫」です。本作は、「小学四年生」掲載作品らしく、のび太のいたずらとしっぺ返しがきっちりと描かれています。
台風のエネルギーを捕らえるのではなく、台風そのものを生み出す話としては、「台風のフー子」「台風発生機」の2作がありますが、前者は台風を卵から孵すという生物的な扱い、後者は機械的に台風を発生させる非生物的扱い(生物ではないので当然のこと?)で、対照的で面白いです。個人的には「台風のフー子」の方がより印象深い作品です。のび太とフー子との交流を描き、悲しい結末の後に最後のコマで不思議な余韻を感じさせてくれます。
最後に残ったのが「ジャイアン台風発生中」「コース決定機」の2作。この2作では、台風はちょっと変わった扱いです。前者では、本物の台風は一切登場せず、かわりに人間の「怒り」を台風に模して表示する道具が登場します。そして後者は、登場する道具「コース決定機」は、本来は台風のための道具ではありませんが、ドラえもんが機転を利かせて台風を逸らすために使うという展開が意表をついています。
以上、「台風」を扱った9作品をご紹介しました。今回はちょっと季節はずれになってしまいましたが、台風で家が揺れている中でこれらの作品をまとめて読むというのもなかなか面白いかもしれません。機会があったら、ぜひお試し下さい。
これにて「コロコロ文庫をぶっとばせ」第1回は終了です。今回は、紹介した作品数は比較的少ない方でしたが、次回は、もっと多数の作品が存在するテーマを取り扱う予定です。最後におまけとして、話の中で少しでも台風が登場した話についても、リスト化してご紹介しておきます。
サブタイトル | 巻数 | 初出 | 作品内容 |
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さいなんくんれん機 | 11 | 二・73・10 | 「さいなんくんれん機」で疑似台風が発生 |
野比家は三十階 | 41 | 三・89・8 | 三十階の高さになった野比家を、台風が直撃 |
恐怖のディナーショー | 41 | 四・89・8 | 「お天気ボックス」の台風カードで台風の卵が誕生 |
大長編ドラえもん5「のび太の魔界大冒険」 | 魔界接近の影響で超大型台風が発生 | ||
大長編ドラえもん10「のび太とアニマル惑星」 | 秘密道具「台風の複眼」が登場。付けると体のまわりが小さな台風の目になる。 |