のび太だって、ただ日々を漫然と過ごしているわけではない。彼だってたまには、自分の将来について考えたり、何か重大なことを決意することだってある。もっとも、ここでの「重大」は、あくまでのび太本人がそう思っているだけの事で、他人から見ればどうでもいいような内容であることも多いのだが。そんな、のび太の「やる気」を表す決意の言葉を集めてみた。
なお、この「のび太の名言」の章題は、当初は全てを原作のサブタイトルで統一する予定だったが、しっくりくるものがなかったため、泣く泣くあきらめて本章はテレビアニメ版のサブタイトルより引用した。
のび太の将来への誓い、その一。「こどものうちになれないから、おとなになってからなる」と言う動機は実にのび太らしい。しかも、実は後にのび太は「タイムふろしき」で大人になることによってこの希望をかなえている。21巻「いばりやのび太」がそれだ。もっとも、同時に「大人のがき大将」の格好悪さも思い知らされたようだが。
おそらく、のび太のしずちゃんへの最初のプロポーズ。しかも、本物のプロポーズはしずちゃんの方からなので、もしかしたらのび太がしずちゃんに結婚を申し込んだのは、ただこの一回だけかも知れない。そう考えると実に貴重な発言だ。
しかし、考えてみるとこの話は「のび太のおよめさん」よりも前の話なので、この頃のび太の結婚相手はジャイ子だったはずだ。それにもかかわらず、しずちゃんにこう言ったのび太からは「未来を自分の力で変えてみせるぞ」と言う意気込みが伺える。
のび太がたまに、勢いでジャイアンやスネ夫との間に交わしてしまう「無茶な約束」の一つ。てんコミでは初めてだろう。「首でもなんでもやる」というのは確かに無茶な発言なのだが、後の「鼻でスパゲッティ」に比べれば、やや独創性に欠け、そのためか個人的にはいまいち印象の薄い言葉である。
ここだけを聞くと、大変立派な発言である。しかしその実態は、小遣い稼ぎをしたかっただけ。しかも、実際に働くのはのび太ではなくカネバチである。まあ、機械化が進んだと思われる22世紀では「道具を使う」だけでも、立派に働いたと言えるのかも知れないし、そう考えればまっとうな発言なのだろう。
「首でもなんでもやるぞ」のところでも触れた、のび太の無茶な約束第二弾。また、のび太自身の発言ではないが「目でピーナッツをかむ」にも通じる、「顔面食事シリーズ」の第二弾でもある。
「首でも〜」と比べると、視覚的に想像しにくい(あまり想像したくない)場面だが、無理すれば何とか出来そうなところがいい。また、本当にこれをさせようとしたジャイアンとスネ夫にも拍手を送りたい。
これも、将来に関するのび太の発言の一つに入れていいだろう。このような本末転倒な発言はのび太の得意とするところで、第一章で紹介した「もう少しうまくなってから〜」にも通じる内容である。どこまでわかって言っているのよくわからないところに、のび太という人間の底知れない奥深さを感じる。それとも、この場合は自分より下の世代の子供達に楽をさせてあげたいという気持ちの現れなのだろうか。のび太に限ってそれはなさそうだが。
ジャイアン達との約束が果たせず、自ら死を選ぶのび太。実にシリアスな場面だ。「のび太を轢く」はずだった車がおもちゃでさえなければ。こういう、どこまで本気かわからない発言もまた、のび太の魅力の一つだ。この場面でも、道の真ん中に座り、目をつぶって覚悟して、こう発言するのび太の姿が、実にいいとぼけた味わいを出している。