ドラちゃんのおへや

アニメ制作なんてわけないよ

第6回「サブタイトル考察(2)」

 サブタイトル考察の2回目です。前回の終わりに予告したとおり、今回は同じ原作の再度のアニメ化、いわゆる「リメイク版」におけるサブタイトルについて書きます。
 大山ドラでは、リメイク版が制作された場合、サブタイトルは1回目のアニメ化とは異なる題が付けられています。原作が同じであっても、一つのテレビアニメシリーズの中で同じサブタイトルが2本あっては都合が悪いため、意図的に変えていると思われます。また、リメイク版はあくまで以前の作品とは別物だと言う制作者の意図も込められているのかも知れません。
 いずれにせよ、リメイク版におけるサブタイトルの付け方も場合によって様々で、興味深いのです。いくつかのケースに分けて、実例をご紹介します。

1.最初のアニメ化が原作と異なる題の場合

 前回ご紹介したように、アニメ化の際には、てんとう虫コミックスの原作サブタイトルとは異なる題が付けられる場合が、しばしばありました。
 このような場合、リメイク版では原作そのままの題になる事がほとんどです。原作ファンにとっては馴染みのある題でしっくりきますし、原作通りの題になった事で「決定版」と言える雰囲気もあり、一番好ましいケースだと思います。

 (例)「あの窓にさようなら」「あの日あの時あのダルマ」「ガンファイターのび太」「家がロボットになった」「パンドラのお化け」「だいこんダンスパーティー」など。

2.最初のアニメ化が原作と同じ題の場合

 「ドラえもん」でリメイク版を制作する場合、原作は帯番組時代にアニメ化された話がほとんどですので、一度目に原作と同じ題で放送されているケースの方が、圧倒的に多いのです。
 この場合、当然リメイク版では原作と異なる題を付けざるを得ません。ここでスタッフのセンスが問われるわけですが、なるほど上手く付けたなと思う題から、これは無理があるだろうと思わざるを得ない題まで、リメイクされた年代の違いによって、様々です。
 以下で、それらを詳しくご紹介します。

(1)最初のアニメ化時の題が「道具名のみ」の場合

 このような場合、リメイク版の題は大きく2つのパターンに分けられます。
 一つ目は、題を「道具名+何らかの言葉」とするパターンで、例としては「マジックハンドでお返しを!」「わすれろ草を君に」「とんだタイムふろしき」「グルメテーブルかけで食べ放題!!」などが挙げられます。
 この場合、道具名はそのまま残っているので、どの原作をリメイクしたかは比較的わかりやすいでしょう。

 もう一つ、「話の内容や道具の効用などを題にする」と言う手法も多く使われています。この手法に関しては、リメイクが増えてきた1992年頃の放映リストをご覧いただければ、たくさん見つかります。
 例えば「石ころになりたい」(原作「石ころぼうし」)、「のび太はでんでん虫?」(原作「デンデンハウスは気楽だな」)、「お星様にお願い」(原作「ねがい星」)など。
 これらの題は、どの原作をリメイクしたか比較的推測しやすいと思われますが、中にはひねりすぎて本編を観ないとどの原作を使ったのかさっぱりわからない題もあります。  例えば、「ジャイアンをだまらせろ」「のび太のカターイ決心」「ママをダイエット」「スーパーサラリーマン」「先生サイアクの一日!」など。
 本編を観ずにこれらの話の原作を当てる事が出来たら凄いと思います。あえてここでは原作を挙げないので、考えてみて下さい。

 更に無茶なケースとしては、リメイクによるタイトル変更のために道具名を変えてしまった例もあります。
 具体的には「ひい木バッジ」(原作「ひい木」)、「タイムぞうきん」(原作「ゆっくり反射ぞうきん」)、「大人をしかるIDカード」(原作「大人をしかる腕章」)、「妖精ロボット」(原作「小人ロボット」)など。
 今挙げた題は元の道具名の面影が残っているのでまだマシですが、最もひどい例として「スペシャルカード」(原作「オールマイティパス」)は、外せません。これも、題だけから原作を推測するのは難しいでしょう。いずれにせよ、サブタイトルの区別のためだけに原作の道具名を変えてしまう事は、どうにも納得できません。
 ちなみに、「あやうし!タイガー仮面」(原作「あやうし!ライオン仮面」)のように、道具名でなくキャラ名が変わった場合もあります。

(2)最初のアニメ化時の題が道具名ではない場合

 この場合は、リメイク版では単純に道具名のみの題にしてしまう事が多いです。
 例を挙げるときりがありませんが、「体ポンプ」(原作「大男がでたぞ」)、「無人探査ロケット」(原作「宇宙人の家?」)、「モンタージュバケツ」(原作「お客の顔を組み立てよう」)、「空気ピストル」(原作「けん銃王コンテスト」)など。
 題が道具名だけになってしまうと、せっかくの原作の味が消されてしまい、味気ない感じがします。

 もちろん、単に道具名だけの題にするばかりではありません。原作とは異なり、なおかつ内容を上手く表した印象的なサブタイトルも、たくさんあります。
 個人的に印象深いものを挙げると、「森は呼んでいる」(原作「森は生きている」)、「13年目のプロポーズ」(原作「プロポーズ作戦」)、「ミュンヒハウゼン城へようこそ」(原作「ゆうれい城へ引っ越し」)、「のび太の悪人志願」(原作「悪の道を進め!」)などは、好きな題です。
 できれば、この路線で頭をひねって、いい題をもっと多く付けて欲しかったところですが、現実には道具名のみの題が多いのは残念です。

 以上、アニメドラにおけるリメイク版のサブタイトルの付け方を、一通りご紹介しました。
 基本的に、「原作とは違い、かつ印象的な題」を要求されるわけですから、さぞスタッフも苦心した事でしょう。その結果として道具名まで変えてしまうのは、さすがにどうかと思いますが。

 個人的な思い出ですが、私は大山版ドラが放映していた時にはアニメ雑誌で一ヶ月分の放映予定をチェックして、サブタイトルから原作のどの話をやるのか想像していました。
 この時、原作に無い名前の道具がサブタイトルになっていると「オリジナルか」と判断するわけですが、実際に放送を観ると、実は道具の名前を変えたリメイクという場合もしばしばで、「だまされた」と思ってしまったものです。

 その点、今放送しているわさドラでは、煽り文句を外せば基本的に原作通りのサブタイトルなので、こう言った予想は出来なくなってしまい、ちょっと寂しい気もします…と書いて締めようと思ったのですが、6月からは、わさドラも原作と違う題を付けるようになってしまいました。こうなると、今度は原作通りの題が懐かしくなってしまいます(→この件については第7回で補足しています)。 (2007.6.17)