スタッフ・声優を一新した「わさドラ」も、4回目の大晦日を迎えようとしています。
放映開始当初は、「原作単行本45巻の中からアニメ化していく」と、「ドラえもん」の原点に戻ってあらためて原作をリメイクすることが謳われていましたが、2007年以降は特番を中心にアニメオリジナルストーリーも放映されるようになり、また「単行本45巻」からは外れる原作のエピソードもいくつかアニメ化されています。これは、明らかに開始当初の方針が変更されていると言えるでしょう。
そこで、今回は「わさドラ」開始から2008年末までの期間について、1年ごとにどの時期の原作が何話使われたかを集計してみました。まずは、集計表をご覧下さい。
「わさドラ」原作使用状況集計表 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
放映年 | 放映 話数 | 使用原作話数 | ||||||||
てんコミ 1-10巻 | てんコミ 11-20巻 | てんコミ 21-30巻 | てんコミ 31-40巻 | てんコミ 41-45巻 | てんコミ プラス | てんコミ 未収録 | オリ ジナル (長編) | オリ ジナル (短編) | ||
2005年 | 64 | 28 | 21 | 10 | 3 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2006年 | 78 | 26 | 13 | 16 | 12 | 9 | 1 | 1 | 0 | 0 |
2007年 | 64 | 10 | 6 | 14 | 14 | 5 | 6 | 0 | 6 | 3 |
2008年 | 61 | 8 | 11 | 13 | 10 | 3 | 3 | 0 | 6 | 7 |
以上、表をご覧になれば一目瞭然ですが、明らかに2006年までと2007年以降では原作の使い方が異なっています。
2006年までは、てんコミ前半の一ケタ巻や10巻台に収録された比較的古い原作から最も多くアニメ化されていますが、2007年以降は20巻台、30巻台からのアニメ化が増え、またアニメオリジナルのエピソードも一定の割合で放映されるようになりました。さらに、原作もてんコミ全45巻にとどまらず、藤子・F・不二雄先生の没後に刊行された「ドラえもん プラス」からのアニメ化も増えています。
このような原作使用状況の変化について考察してみると、二つの理由が考えられます。
一つは、「2006年までで初期の有名な原作をある程度アニメ化することで「わさドラ」世界の基礎固めを終えて、2007年からは原作の年代にとらわれずにアニメ化するようになった」と言う事。
そしてもう一つは、2007年5月以降の番組リニューアルにより、新たに「構成」として水野宗徳氏が番組に加わった事が挙げられます。
上で挙げた二つの要因は、それぞれ独立している訳ではなく、互いに関係のある事柄でしょう。
つまり、2年間の放送で番組の「基礎固め」が出来たと判断されたからこそ、リニューアルが行われて、番組に「構成」担当者を立てて原作の発表年代に囚われないアニメ化を行うようになったと言えます。
アニメオリジナルエピソードが放映される事になった理由についても、原作ストックを維持する為に4本に1本はオリジナルを入れていると、構成の水野氏がコメントしています(テレビ朝日・2008年3月22日放映「日本人のギモン(秘)取材 よくある質問2時間スペシャル」より)。実際にはオリジナルの割合は4本に1本までは行かず、せいぜい7〜8本に1本くらいですが。
ともかく、2007年・2008年ともに原作は「ドラえもん」の連載された約20年間からほぼ満遍なく使われるようになりました。結果として、話のバラエティは豊かになったと言えます。
このような状況を踏まえた上で、ここからは私個人の、リニューアル後の「わさドラ」への感想を述べさせていただきます。
正直に言うと、リニューアル直後の2007年はあまりパッとしない感じで、迷走している感すらありました。しかし、2008年に入ってからは原作短編のアニメ化で、面白いものがかなり増えたと思います。
特にタイトルを挙げると、「特撮ウラドラマン」「バイバイン」「ベロ相うらないで大当たり!」「スネ夫の無敵砲台」などは、原作をより面白く見せるうまい展開や描写が盛り込まれており、ある意味原作を超えたと言えるほどの出来でした。
また、オリジナルエピソードも短編の「世界をぬりかえよう」や30分1話完結の「しずかちゃんへのプレゼントはのび太」は原作世界からかけ離れない丁寧な作りになっており、ようやく「わさドラ」スタッフもしっかりと「ドラえもん」と言う漫画の面白さをつかんだのだなと、観ていて嬉しくなりました。
このように、非常に面白いと思えるエピソードが見受けられる一方で、残念ながら「これはちょっと…」と思わざるを得ない話もあります。
具体的に言えば、1時間特番での長編エピソードは、どれも「ドラえもん」らしくない話ばかりで、「今度こそは面白くなっているといいな」と思って毎回観ているのですが、いつもがっかりしてしまいます。2007年の「海賊大決戦 〜南海のラブロマンス〜」から始まって、最近の「ドラえもんの青い涙」まで全て、「別に「ドラえもん」でやらなくてもいいだろう」と思うようなストーリーばかりで楽しめません。
1時間特番そのものだけではなく、その前週に原作エピソードで特番への「引き」を入れるのも困りものです。「ドラえもんに休日を!!」は「引き」だけでなくドラえもん不在の理由までが特番の展開に絡めた物に変えられたため、原作とかなり印象の異なる内容になっていました。
さらに、「地底の国探検」「宇宙ガンファイターのび太」「ジャイアンズをぶっとばせ」など、一応原作付きでありながら話が大幅にアレンジされて「半オリジナル」と言うべきエピソードもありますが、これらの話もオリジナル部分が原作から大きく乖離した印象で、楽しめませんでした。
結局のところ、現在の「わさドラ」は玉石混合で、話ごとの出来がかなり激しい状態だと思います。
大ざっぱに言うと、原作短編を素直に短編としてアニメ化した物には「外れ」が少なく、オリジナルにせよ原作付きにせよ長編に挑戦すると失敗が多い感じです。もちろん、これは一原作ファンの印象に過ぎませんが、私としては「長編さえ面白くなれば「わさドラ」を全面支持できるのに」と残念に思います。この点については、来年以降の改善に期待します。
とりあえず、今回の本文はここまでですが、おまけに前回の補足として、「わさドラ」リニューアルに伴うサブタイトルの変化についても触れておきます。
現在の「わさドラ」のサブタイトルの付け方は、大山ドラで主流だった「道具名そのまま」の逆で、基本的に原作の題が道具名そのままの時は、そうでない題に変える方針をとっているようです。個人的には、2007年5月までの放送で付けられていた「煽り文句」部分がサブタイトルに昇格したとような印象です。
しかし、これは徹底されているわけではなく、「ジキルハイド」は原作通りに道具名そのままですし、「ドラマチックガス」「アドベン茶」のように、原作が道具名そのままの題でない(「もりあがれ!ドラマチックガス」「アドベン茶で大冒険」)のに、アニメで道具名だけにしてしまう場合もあり、どうも方針が一貫していないようです。
サブタイトルについては、「わさドラ」開始当初の「原作そのまま、煽り文句なし」が一番スマートでわかりやすかったので、今からでもこの形に戻して欲しいと思います。
今回は、「わさドラの原作使用状況」として話を始めながらも、「わさドラ」リニューアル後の内容に関する個人的感想がメインになってしまいました。
実は、これは元々ブログの「アニメドラ考察」のカテゴリで取り上げようと考えていたのですが、gooブログでは表を含めたHTMLが使えないので、こちらで公開する事にしました。そのため、これまでの当コーナーの内容とはやや雰囲気が異なります。
また、当コーナーで「わさドラ」を本格的に取り上げたのも、今回が初めてです。「わさドラ」も気が付けば4回目の大晦日を迎えるまで放映が続き、徐々にネタも増えていますので、今後は「わさドラ」ネタを取り上げる事が増えるかも知れません。 (2008.12.1)