ここでは、テレビアニメ版「ドラえもん」について、ミニコラム的な雑文を発表しています。
特に、話題としての扱いやすさから、2005年3月で一区切りの付いた大山のぶ代版の話題が中心になっています。大山ドラは26年の長きに渡って放映されてきたため、本編にも周辺事情にも、話し始めたらきりがないほど興味深い事柄が色々とあります。その中から、私が個人的に気になっている話題を取り上げています。
ただ、私はあくまで「ドラえもん」の主体は原作漫画にあると考えていますので、必然的に原作絡みの話が多くなるでしょう。また、アニメ本編は再放送やビデオ録画・DVDなど観られる範囲が限られますので、取り上げたくても実物が観られずに断念する場合もあるかもしれません。
ともかく、本コーナーは気軽に読んで、「ふーん、そうなのか」と思っていただければ、幸いです。
2005年4月15日、シンエイ動画版アニメ『ドラえもん』第2期、通称「わさドラ」が始まりました。この日は、原作より「勉強べやの釣り堀」「タイムマシンがなくなった!!」「思い出せ!あの日の感動」の3本が新たにアニメ化されて、放映されました。
この中で、ある意味では驚きを持って迎えられたのが、3本目の「思い出せ!あの日の感動」でした。原作では「ハジメテン」という薬が登場しましたが、わさドラ版では、「はじめてポン」と言うスタンプ型の道具に変わっていたからです。
わさドラにおいて、原作で薬だった道具が別の形状、方式に変えられた例はこれだけではありません。例えば「ギシンアンキ」は「ギシンアンコ」になってしまいましたし、「ムシスカン」は錠剤ではなく身体にかける液状の道具に変えられてしまいました。これらの改変により「わさドラでは「薬を飲む」行為を自主規制しているようだ」と、言われるようになっていきました。
しかし、果たして薬の規制は、わさドラだけの問題でしょうか。目立たなかっただけで、実は大山ドラでもあったのではないでしょうか。大山ドラをいくつか観返しているうちに、そんな疑問がわき上がってきました。
そこで、今回は原作で薬が登場する大山ドラのエピソードのうち、現在観られる可能な限りのエピソードを確認して、薬の扱いがどうなっているかを調べてみました。下に、その結果を表にしてあります。
帯番組時代 |
第151話 ソウナルじょう (1979年9月24日放映) |
第168話 のろのろじたばた (1979年10月13日放映) |
第264話 動物がたにげだしじょう (1980年2月6日放映) |
第298話 コーモンじょう (1980年3月18日放映) |
第301話 ピンチの時にタスケロン (1980年3月21日放映) |
第321話 「オモイコミン」 (1980年4月16日放映) |
以上の6話は、ほぼ原作通りの内容で、薬だと明言している。 |
第576話 しずかちゃんさようなら (1981年6月22日放映) |
第607話 くすり製造機 (1981年9月1日放映) |
以上の2話は、未ソフト化のため未確認 |
金曜時代 |
第668話 サカユメンでいい夢みよう (1982年6月25日放映) |
原作とほぼ同じ内容で、特に「薬」であるとの言及はない。 |
第695話 最初の感動を呼びさまそう (1983年1月21日放映) |
原作に忠実な展開で、「早くこの薬を飲んで」とのセリフあり。 |
第747話 悪魔のイジワール (1984年1月20日放映) |
原作と同様に「恐るべきこの薬を使って」と言っている。 |
第881話 のび太のカターイ決心 (1986年8月29日放映) |
原作に忠実な内容で、ムシスカンの描写も原作のまま。のび太が大量に飲む描写も、しずかがそれを吐かせようとする描写も、原作通りに描かれている。また、薬以外でわさドラでは規制されていた「強烈な不ゆかい放射能」というセリフも原作通り。ソフト化されないのは、このあたりが問題なのか。 |
第941話 ツーカー錠 (1987年10月30日放映) |
原作と同じく「この薬を分け合った仲は」と言うセリフがあり、ツーカー錠が「薬」だと明言されている。 |
第968話 タスケロン・カプセル (1988年3月18日放映) |
形状はカプセル状になり、名前もただのタスケロンからタスケロン・カプセルへと変わったが、「いい薬がある」などのセリフは元のまま。リメイクなので、何か変化を付けようとしてカプセルに変えてみただけなのだろうか。 |
第1058話 強力ウルトラスーパーデラックスキャンデー (1989年12月15日放映) |
「錠」→「キャンデー」に変更された。原作でも「キャンディみたい」と言われているので比較的違和感は少ない。なお、わさドラでのアニメ版「大パニック!スーパー赤ちゃん」でも同様に「キャンデー」に変更された。 |
第1408話 ひとつぶ24時間 (1996年7月26日放映) |
どう見ても薬で、のび太が飲む描写もあるが、道具名が原作でのドラえもんセリフより引用した「ひとつぶ24時間」となり、本編中で「薬」とは明言されなかった。 |
第1486話 レインボードロップ (1998年2月20日放映) |
原作(原案か?)は、「仮病薬」。「病気になる薬」が、顔の色を変えるだけの「レインボードロップ」になった。 |
上の表で判断する限りでは、アニメ『ドラえもん』で薬の道具に対する自主規制が始まったのは、おそらく1989年放映の「強力ウルトラスーパーデラックスキャンデー」からだと思われます。原作でも名前が「錠」なのに実物は丸くて「キャンディみたい」と言われていますので、あえて「薬」を避けるために変えたのかどうかは微妙なところではありますが。
この「強力ウルトラスーパーデラックスキャンデー」を含めても、その後は「ひとつぶ24時間」「レインボードロップ」と、原作で薬が登場する話はわずか3本しかアニメ化されていません。さらに言えば、1990年代以降のアニメ『ドラえもん』では原作のないオリジナル脚本より数多くの話が作られましたが、こちらでも薬は登場していません。1990年代以降は、原作・オリジナル問わず薬絡みの道具を登場させること自体が避けられていたと言えます。
大山ドラ後期はこのような状態でしたが、わさドラになって、「原作からアニメ化していく」という方針の元で、薬の登場する話が新たにリメイクされていきました。その出来不出来はそれぞれの話で判断すべきところですが、埋もれていた原作に再びアニメ化という光を当てた点については、評価できると思います。
今後も、アニメ『ドラえもん』の放映は続きますから、また薬の道具が改変されるかも知れません。私は、とりあえず「ああ、スタッフも苦労しているんだな」と、あったか〜い目で見守っていきたいと思います。
と、言ったところで今回は終わります。わさドラになってからの薬規制のあり方については、いずれ単独で詳細にまとめてみたいと思います。
このコーナーの更新は、前回から丸三年も間が空いてしまいましたが、今後も出来る限りは続けていきたいと思っていますので、どうかよろしくお願いします。 (2012.9.3)