ドラちゃんのおへや

アニメ制作なんてわけないよ

第8回「大山ドラの再放送を振りかえる(1)」

 現在放映中の「わさドラ」は基本的に30分まるまる新作アニメを放映しており、過去作品の再放送が流れる機会は大晦日特番くらいしかありません。
 しかし、大山ドラの時代は新作1本+再放送1本の2本立て放送が長く続けられていたのをご記憶の方は多いでしょう。この放映形式には、いくつかの理由があったと思われます。
 つまり、

 ・帯番組時代の話で、日曜30分枠で未放送のものが多く残っていた
 ・毎週30分2本立てで放映すると、原作ストックが無くなる
 ・Bパートの再放送が定着して、番組の売りの一つになった

 などが、考えられます。

 (1)で触れた帯番組時代のエピソードは、金曜枠では1982年から1984年にかけて放映されました。関東地区では再放送ですが、他の多くの地域では初放送です。この時代は「新作×1、再放送×2」の3本立てであり、そのため新作の尺は9分弱とかなり短くなっていました。このあたりの事情については第3回で詳しく取り上げていますので、そちらをご覧下さい。
 (2)はアニメオリジナル話を放映するようになった1991年秋以降は理由として弱いのですが、この頃になると(3)にあげたように、「『ドラえもん』は懐かしい話も観る事が出来る」ことが番組の売りとなっており、再放送目当てに観る人もいたのではないでしょうか。私自身、1980年代前半はまだビデオを持っていなかったせいもあって、新作にアニメオリジナルが増えてからは旧作再放送の方を、より楽しみにしていました。

 理由はどうあれ、大山ドラ時代はBパート(2本立ての2話目)再放送は当然のこととして受け入れられており、大山ドラ終了の2005年まで、長年に渡って行われていました。
 それだけ長くなれば、当然色々と語るべきネタも生じてきます。それらのネタについて、今回から振り返ってみたいと思います。

 1回目としてまず、「再放送の回数」を調べてみました。本コーナー第3回において尺の違いで時代を分けましたが、今回はそのうち放映枠が金曜19時に移ってからの新作について、どれだけ再放送されてきたかを見てみました。
 新作としての放映時期は、第3回のものをそのまま使い、以下のようにします。

 (1)10分50秒時代・その1(1981年10月2日〜1981年12月25日)
 (2)8分57秒時代・その1(1982年1月8日〜1984年5月11日)
 (3)10分50秒時代・その2(1984年5月18日〜1984年11月23日)
 (4)12分43秒時代・その1(1984年11月30日〜1987年3月27日)
 (5)10分50秒時代・その3(1987年4月10日〜1988年7月15日)
 (6)12分43秒時代・その2(1988年7月22日〜1991年1月18日)
 (7)10分50秒時代・その4(1991年1月25日〜1993年3月26日)
 (8)10分50秒+8分57秒時代(1993年4月2日〜1993年6月18日)
 (9)10分50秒時代・その5(1993年6月25日〜1993年10月1日)
 (10)8分57秒時代・その2(1993年10月15日〜1998年6月26日)
 (11)10分50秒時代・その6(1998年7月3日〜2005年3月11日)

 まず最初にお断りしますが、(10)(11)の時期の話は、レギュラー放送ではほとんど再放送されていません。
 (10)については12分43秒の新作が作られなくなったために、映画宣伝やプレゼント等の告知がある時に時間調整のために放送された例が何度かあるのみで、(11)については本放送自体が遅かったために単純に再放送の機会自体が少なく、2000年までの放送分が番組最末期に一度再放送されたのみです。
 ですから、2本立て再放送の始まった1984年5月18日以降で、まとまった再放送が行われたのは(9)までの時期の話となります。以下に、(1)〜(9)の再放送時期をまとめましたので、ご覧下さい。

 [1]上記(1)の再放送(1984年5月18日〜1984年11月23日)
 [2]上記(2)の再放送(1984年11月30日〜1987年3月27日)
 [3]上記(3)の再放送(1987年4月10日〜1987年10月2日)
 [4]上記(1)の再放送(1988年1月8日〜1988年7月22日)
 [5]上記(2)の再放送(1988年7月29日〜1991年1月18日)
 [6]上記(3)の再放送(1991年1月25日〜1991年8月2日)
 [7]上記(5)の再放送(1991年8月9日〜1993年1月22日)
 [8]上記(2)の再放送(1993年6月25日〜1993年10月1日)※一部の話数のみ
 [9]上記(4)(6)の再放送(1993年10月15日〜1998年6月26日)
 [10]上記(7)(8)(9)の再放送(1998年7月3日〜2001年2月23日)※(8)の8分57秒の話は除く
 [11]上記(5)の再放送(2001年3月16日〜2002年5月31日)
 [12]上記(3)の再放送(2002年6月14日〜2002年10月25日)
 [13]上記(1)の再放送(2002年11月1日〜2003年2月28日)

 以上のようになります。
 補足しておきますと、上記の[13]より後の2003年3月以降は、(11)の時期の話を中心として、尺が10分50秒の話が順不同で再放送されました。[10]〜[12]の時期に未放映だった分を補完する意図もあったようです。

 さて、このまとめをご覧になれば一目瞭然ですが、圧倒的に再放送の回数が多いのは、(1)〜(3)の時期の話です。何しろ、(1)〜(3)まで一通り再放送した後にもう一巡している上に、(1)(3)は21世紀に入ってからも引っ張り出されているくらいです。
 私も含めて、現在30台前半の人は1980年代に小学生であり、この時期に大山ドラを熱心に見ていた方が多いでしょう。そのような世代にとっては、(1)〜(3)の話は本放送を含めてレギュラー放送だけで子供時代に3回も観る機会があったわけで、アニメ『ドラえもん』の中でも、もっとも思い出深いエピソード群となっているのではないでしょうか。

 個人的な思い出としては、(1)に含まれる「シャラガム」はアニメから知ったエピソードで、「ガムシャラガムシャラ…」とつぶやきながら頑張るのび太の姿が印象的でした。原作がてんとう虫コミックスには未収録だったので、再放送が行われるたびに嬉しく思ったのを覚えています。
 ちなみに、この話はてんコミに入っていなかった上に、ひみつ道具が登場せずにのび太が自分の力で頑張る珍しい展開の話だったために、当時は「原作にはないアニメオリジナルの話」と思いこんでおり、かなり後になってから藤子不二雄ランドで原作を見つけた時には驚きました。
 「シャラガム」に限らず、てんコミ未収録の原作からも多数がアニメ化されていますが、(1)〜(3)の時期で放映されたために、アニメを通じて多くの人の心に残っているエピソードも多いのではないかと思います。個人的には「ロボット雪だるま」は原作よりアニメ版の方が好きです。

 (1)〜(3)とは逆に、(4)(6)の12分43秒尺の話は、特番を除くと一度しか再放送の機会がありませんでした。
 特に(4)は原恵一・安藤敏彦の両氏による演出が冴えて傑作エピソードが続出した時期であり、それらの話を目にする機会が少なかったのは残念です。尺が長い故に、毎回じっくりと話が描き込まれており、見応え十分でした。
 一部のエピソードはレンタルビデオシリーズ「21世紀テレビ文庫」に収録されましたが、ビデオレンタルがほぼDVDに移行してしまった今となっては、このシリーズを置くレンタルビデオ店も少なくなっており、再放送のみならず現在でも視聴は困難です。今後、DVD化やCSテレ朝チャンネルでの再放送を期待したいところです。
 (7)以降の時期の話も、基本的にレギュラーでの再放送は一度のみですが、本放送・再放送ともに1990年代以降と比較的新しめですので、これは仕方がないでしょう。

 結論としてまとめれば、繰り返しになりますが(1)〜(3)の話は非常に恵まれています。この時期の話は、再放送が多かっただけでなくレンタルDVDに収録されているものも多く、金曜時代の大山ドラでは過去・現在合わせて最も親しまれているエピソード群と言えるでしょう。

 今回は、ここまでとしておきます。次回は、再放送に伴う諸事情について、もっと踏み込んで述べるつもりです。
 それにしても、大山ドラは他のアニメとは違って番組内でのBパート再放送が定着していたせいか、30分枠丸々の番組としての再放送は、基本的に行われていませんでした。だから、ビデオの普及していなかった時代は、過去のエピソードを観るためにはBパートでの再放送を待つしかなかったのです。
 歴史に「もし」は禁物ですが、もし大山ドラが新作+再放送の組み合わせ放送を行わず丸々新作での放送を続けていたなら、番組として30分枠での再放送が行われる機会があったのではないかと思います。その場合は、全国ネットではなくローカル枠での再放送だったのでしょうが。事実、わさドラは主に映画公開に合わせて、各地のローカル枠で再放送が行われています。
 結果としては、再放送は番組の売りの一つにもなったのですが、その反面で「30分枠の番組」としての再見の機会が事実上なくなっているのは、残念なことです。 (2009.4.30)